プライスレスな経験なんてない。〜だからこそ相対的貧困にはプライスレスな経験の支援を!〜
プライスレスな経験なんてない
大自然の中で渓流釣りをしている親子に魚がヒットし、子どもが満面の笑みを浮かべる。それを満足げに眺める父親。
その経験プライスレス。
某カード会社が一昔前に流していたCM。プライスレスは、「お金では買えない経験」か。
この間、記者体験をするために集まった高校生たちに、「プライスレスなんてものはないんだよ」という話をした。
例えばCMのお父さん。渓流釣りの装備。大自然の奥まで行く交通費と宿泊費、それに食事代。あの経験をするためにお父さんは一体いくら使ったのだろう。
そこをカードでご負担少なくどうですか?っていうのがCMのコンセプトなんだけど。
すべての経験にはコストがかかっている。つまり、コストが負担できなければ経験は得られない。それがぼくらの資本主義の社会だ。だからプライスレスなんてものはない。
でも、高校生くらいの年齢だと、クラブ活動で頑張って大会で優勝するみたいな、値付けできない価値ある経験はプライスレスなもので、個人の努力で勝ち取ったものだと勘違いしやすい。
大学で講義をするときに、「君たちがそこに座っていられるのは、君たちが生まれた家がそれを可能にしているのかもしれない。君が隣の家に生まれていたら君はそこに座れていないかったかも。どこの家に生まれたかでその人の人生が決まってしまう、それが格差社会なんだ」と、ぼくは話す。
義務教育が終わると、徐々に格差の上にいる人と、格差の下にいる人たちが出会わなくなる。だから、ぼくのしている活動は、君たち若者にもっとも身近でいて、もっとも遠い活動なのだ。
経験の“負の蓄積”が進路選択を限定的にする
経済格差は教育格差に直結していることが明らかなように、貧困が連鎖するのは、得られなかった経験の“負の蓄積”のせいだと言える。貧困の連鎖に若者たちが取り込まれていくと、この国自体が脆弱化してしまう。それはつまりぼくら自身にとっても不利益があるということ。
だから、6人に1人いる子どもの貧困の問題を、なんとか解消していかなければならない。ということで「子どもの貧困対策の推進に関する法律」ができた。でも思うのは、政治的コンセンサス(合意)は得られたものの、市民的コンセンサスが得られていないのがこの国の現状だということ。
貧困女子高生報道の炎上
今さら詳しくは書かないが、貧困状態の女子高生がNHKのニュースに出て、ネットで国会議員を含めて「叩き」をしている。これは、相対的貧困というものに対するコンセンサスが十分得られていない証拠だろう。
相対的貧困は、お金がないわけではなく、お金が十分にない状態だから、当然のことながら何かしらにはお金は使う。それがネット民たちは気には食わなかったようだ。そして憂さ晴らし的な攻撃が開始され、炎上した。
例えば、デコレーションされたiPhoneを派手なネイルで弄っている茶髪フルメイクの女子高生が貧困だとは誰も思わないだろう。でも、相対的貧困というのはそういうところに潜んでいる。そして、当事者たちは、誰にも気づかれないようにしている。
相対的貧困は絶対的貧困と違い目に見えないのだ。
茶髪フルメイクの女子高生は、率直に言ってお金を使うプライオリティがおかしいわけだけど、そのプライオリティを決定しているのは仲間意識だったりする。もしかしたら、叩かれた女子高生の属すグループでは、ジャニーズにコンサートに行ったことないことはダサイことなのかも知れない。或いはカラコン入れてなかったらダサくそのグループには属せないのかもしれない。
或いは、あるアニメの映画を何度も観たことでステイタスが上がるのかもしれない。要するに、三度の飯よりも大切なものがあり、それが仲間なのだ。あるモノを持っていたり、体験していなければハブられる的なヒエラルキーがあったりするのがこの年頃のだったりする。
子ども・若者の貧困問題を考えるときに、このような視点はスティグマの問題と絡め、念頭に置かなければならない。
プライスレスな経験を子ども・若者に!
相対的貧困っていうのは、カネで買えないプライスレスな経験ができないことなんだよ。だから、カネで買えるものでごちゃごちゃ言うのはやめようぜ。叩かれた女子高生で言えば専門学校に行けないことで貯まる、得られなかった“負の蓄積”が問題なんだよ。
彼ら、彼女らにプライスレスな経験を国や民間があの手この手で提供することこそがぼくは貧困対策だと信じている。子ども食堂も、課題集中校における校内居場所カフェも、そのひとつだ。
今回の件で女子高生は深く傷ついている。学校に行くのも、外出することも大変なことだろう。彼女の傷が一日も早く癒えることを願ってやまない。そして、相対的貧困への理解への貢献をソーシャルセクターは全力で尽くしていくべきだ。
大自然の中で渓流釣りをしている親子に魚がヒットし、子どもが満面の笑みを浮かべる。それを満足げに眺める父親。
その経験プライスレス。
某カード会社が一昔前に流していたCM。プライスレスは、「お金では買えない経験」か。
この間、記者体験をするために集まった高校生たちに、「プライスレスなんてものはないんだよ」という話をした。
例えばCMのお父さん。渓流釣りの装備。大自然の奥まで行く交通費と宿泊費、それに食事代。あの経験をするためにお父さんは一体いくら使ったのだろう。
そこをカードでご負担少なくどうですか?っていうのがCMのコンセプトなんだけど。
すべての経験にはコストがかかっている。つまり、コストが負担できなければ経験は得られない。それがぼくらの資本主義の社会だ。だからプライスレスなんてものはない。
でも、高校生くらいの年齢だと、クラブ活動で頑張って大会で優勝するみたいな、値付けできない価値ある経験はプライスレスなもので、個人の努力で勝ち取ったものだと勘違いしやすい。
大学で講義をするときに、「君たちがそこに座っていられるのは、君たちが生まれた家がそれを可能にしているのかもしれない。君が隣の家に生まれていたら君はそこに座れていないかったかも。どこの家に生まれたかでその人の人生が決まってしまう、それが格差社会なんだ」と、ぼくは話す。
義務教育が終わると、徐々に格差の上にいる人と、格差の下にいる人たちが出会わなくなる。だから、ぼくのしている活動は、君たち若者にもっとも身近でいて、もっとも遠い活動なのだ。
経験の“負の蓄積”が進路選択を限定的にする
経済格差は教育格差に直結していることが明らかなように、貧困が連鎖するのは、得られなかった経験の“負の蓄積”のせいだと言える。貧困の連鎖に若者たちが取り込まれていくと、この国自体が脆弱化してしまう。それはつまりぼくら自身にとっても不利益があるということ。
だから、6人に1人いる子どもの貧困の問題を、なんとか解消していかなければならない。ということで「子どもの貧困対策の推進に関する法律」ができた。でも思うのは、政治的コンセンサス(合意)は得られたものの、市民的コンセンサスが得られていないのがこの国の現状だということ。
貧困女子高生報道の炎上
今さら詳しくは書かないが、貧困状態の女子高生がNHKのニュースに出て、ネットで国会議員を含めて「叩き」をしている。これは、相対的貧困というものに対するコンセンサスが十分得られていない証拠だろう。
相対的貧困は、お金がないわけではなく、お金が十分にない状態だから、当然のことながら何かしらにはお金は使う。それがネット民たちは気には食わなかったようだ。そして憂さ晴らし的な攻撃が開始され、炎上した。
例えば、デコレーションされたiPhoneを派手なネイルで弄っている茶髪フルメイクの女子高生が貧困だとは誰も思わないだろう。でも、相対的貧困というのはそういうところに潜んでいる。そして、当事者たちは、誰にも気づかれないようにしている。
相対的貧困は絶対的貧困と違い目に見えないのだ。
茶髪フルメイクの女子高生は、率直に言ってお金を使うプライオリティがおかしいわけだけど、そのプライオリティを決定しているのは仲間意識だったりする。もしかしたら、叩かれた女子高生の属すグループでは、ジャニーズにコンサートに行ったことないことはダサイことなのかも知れない。或いはカラコン入れてなかったらダサくそのグループには属せないのかもしれない。
或いは、あるアニメの映画を何度も観たことでステイタスが上がるのかもしれない。要するに、三度の飯よりも大切なものがあり、それが仲間なのだ。あるモノを持っていたり、体験していなければハブられる的なヒエラルキーがあったりするのがこの年頃のだったりする。
子ども・若者の貧困問題を考えるときに、このような視点はスティグマの問題と絡め、念頭に置かなければならない。
プライスレスな経験を子ども・若者に!
相対的貧困っていうのは、カネで買えないプライスレスな経験ができないことなんだよ。だから、カネで買えるものでごちゃごちゃ言うのはやめようぜ。叩かれた女子高生で言えば専門学校に行けないことで貯まる、得られなかった“負の蓄積”が問題なんだよ。
彼ら、彼女らにプライスレスな経験を国や民間があの手この手で提供することこそがぼくは貧困対策だと信じている。子ども食堂も、課題集中校における校内居場所カフェも、そのひとつだ。
今回の件で女子高生は深く傷ついている。学校に行くのも、外出することも大変なことだろう。彼女の傷が一日も早く癒えることを願ってやまない。そして、相対的貧困への理解への貢献をソーシャルセクターは全力で尽くしていくべきだ。
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