スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「これからのひきこもり支援」

以下は、情報産業労働組合連合会が発行する『Report』の平成26年3月号から5月号までの計3回「これからのひきこもり支援」という連載を執筆しました。これに加筆修正を加えたものが以下です。働くお父さんたちや、企業に向けたメッセージとして書かせていただきましたので、是非お読みいただければ幸いです。このような機会を下さった情報労連さまに、この場を借りて感謝致します。



誰もが当事者家族になりうる時代

皆さんは、ひきこもり状態の人々がどれくらいいるかご存知でしょうか?内閣府は15歳から39歳までのひきこもり状態の若者が70万人いると推計を出していますが、ひきこもりは若者に限った問題ではありません。

最近、島根県が行った「ひきこもり等に関する実態調査報告書」では、地域の中でひきこもっている人の年齢は、40歳代が最も多く、53%にも上っていることがわかりました。また、東京都町田市の保健所が、市内の20歳から64歳までの市民に実態調査を行ったところ、自分または家族がひきこもり状態にあると答えた人が5・5%に上り、20世帯に1世帯以上にひきこもり状態の方がおり、このうち40代以上が3割を超えたと発表しています。

20世帯に1世帯以上にひきこもり状態の方がいるということは、草野球チームが試合をしてたら、そこに集うおじさんたちのうちのどなたか一人の家には、ひきこもり状態の家族がいるということです。私は仕事柄、このような話題によく出会うわけですが、「兄弟や親戚にひきこもり状態の家族がいる」という確率が20分の1というのは、納得感があります。

では、20人の社員がいたら?

そう、そのうち1人の社員のご自宅にはひきこもり状態の家族がいる可能性が高いということです。

少し想像してみましょう。クタクタに疲れて帰る家に何年も口をきいていないひきこもりの家族がいる憂鬱を……。ひきこもりはご本人のみならず、ご家族にも強いストレスを与えます。とりわけ親は「子育ての失敗」と捉え、自尊心を損なうでしょう。親戚が集まる席での子どもの話題に肩身の狭い思いをし、休日も気が休まりません。それでも、わが子と自分を恥じて誰にも相談できずにひた隠しにしてしまう……。

これが長期化・高齢化の要因です。厚労省は、ある時期のガイドラインで「ひきこもりは誰がなってもおかしくない」と書いていました。言い換えれば、「誰もが当事者家族になりうる」ということであり、冒頭のデータでも明らかなように、もはやひきこもりは他人ごとではないのです。

まずは専門性よりも共感性

打ち明けられても、特に何もすることができないのがひきこもり問題の厄介な点ですが、保護者がバーンアウトしてしまえば職場にも通えなくなり、経済的にも困窮していまいますし、唯一の社会との接点である親が動けなくなると、子どもへの支援の道が途絶えてしまいます。

もしも、身近な方のご家庭にひきこもり状態の家族がいることを知ったら、直接、子どもへの介入を考える必要はありません。むしろ、話をしてくれた友人や同僚、保護者へのガス抜き的なお付き合いなどで、支えられることがきっとあると思います。

初期的に保護者が必要とするのは、専門性よりも、自分の苦しみを理解してもらえる共感性です。もしも、職場に気になる同僚や部下がいらっしゃれば、今晩一杯誘ってみてはいかがでしょうか。子どもの話をする必要はありません。自分を責めている同僚に寄り添ってあげてください。子育てに正解などないのです。

親だからできないことを受入れる

協力者としてあなたが“ゆるく”かかわれることについて少し書いてみたいと思います。ひきこもりの子どもを持つ親に対し、「親はなぜ黙って見過ごしているのか?」と思う人は多いでしょう。しかし、子どもがひきこもると、親だからこそできないことの方が多くなってしまうのが実際です。

皆さんは、他社の若い社員には、けっこういい話をしているのに、自社の後輩たちにはあまりしていないと反省したことはありませんか?私はそれに近い感じじゃないかと思っています。近いからこそ言えないことがあるように、同じ屋根の下で生活する家族だから言えないことがあるのです。

親は親という役割以外に、さまざまな社会的な役割を持っています。親自身の精神安定のためにも、長期戦になればなるほど波風を立てないようにしてしまう感情もよく理解できます。この親の心理に寄り添えずに助言しても、相手に言葉は届きませんし、むしろ傷を深めてしまうでしょう。親だからこそ出来ないことを受入れ、第三者である自分ができる、“ゆるい関わり方”を考えてみましょう。

さて、子どもの過去や将来の不安ばかりにフォーカスし、忘れがちな視点は、親も成長できる、変われるということです。あなたが親の話に耳を傾けていると、「頭ごなしにせず、もう少し話を聞いてあげればよかった」や「私たち夫婦がこんなだから…」などの反省の言葉が出てくると思います。

あなたは、その言葉を受け止め、同じ言葉を是非子どもにも伝えるようにアドバイスしてみてください。そして、「まずは自分が変わる努力をすること」を子どもに伝えるように促してあげましょう。覚えておいてほしいことは、子どもに対して決して上手に伝える必要なんてないということです。上手に伝えなくてもちゃんと伝わるのが親子なのです。そのことが再確認できるだけでも、あなたの第三者としての“ゆるい関わり”は、大成功です。

そして、どうしたら親の努力を実践できるのかを一緒に考え、自分に協力できることがないか聞いてみてください。ここで重要なポイントがあります。後日、「ちゃんと言えたかい?」という確認はやめること。それが“ゆるく関わる”ポイントです。何事もなかったように普段通りにしていましょう。

人財を守る福利厚生としてのひきこもり支援

NPO法人全国引きこもりKHJ親の会の「引きこもり」の実態に関する調査報告書⑩では、ひきこもりの平均年齢は33・1歳、保護者の平均年齢は61・8歳(親も子も毎年高齢化している)となっています。ひきこもり状態の子どもを持つ親たちが、企業の中核を支える40代後半の働き盛りから、ベテランの管理職というコア人材層にその可能性が高いことが伺えます。

従業員がプライベートで問題を抱えることで、生産性や効率が落ち、うつ病等で事故のリスクを高め、最悪の場合は退職も想定されるでしょう。このようなリスクを考えると、ひきこもりという現象を従業員個人の問題として見過ごすのではなく、福利厚生やCSRの一環として、専門の相談員が悩みを聞き、官民の支援情報の提供や、ガス抜きを図ることは従業員満足度を高め、ひいては業績向上につながる取り組みといえるのではないでしょうか。

しかし、従業員自身が子どもの相談を会社にするとい習慣がないのが現状ですし、窓口もありません。また、「恥の文化」の強い日本では、ひきこもりの子どもを親が隠す傾向が強く、それがひきこもりを長期化させる原因にもなっています。

このボトルネックを、行政や民間支援団体からのアプローチを補完する形で、企業の内側からブレイクスルーできないでしょうか?

実は、私がこの短い連載に託した思いはここにあります。そして、「これからのひきこもり支援」のカタチは、企業が自社の人財を守るために福利厚生として行うべきではないかと考えています。勿論、一足飛びには難しいでしょう。そこでこのコラムでは、ひきこもりのお子さんを抱える社員の方にもし気付いていたら、スルーではなく“ゆるく関わる”を提案してきました。

それが企業の力となり、巡りめぐって企業を超えた地域での互助互恵につながるということを企業人が考えはじめる。そんなきっかけにこのコラムが貢献できていれば幸いです。ありがとうございました。
関連記事
スポンサーサイト
xmlns:og="http://ogp.me/ns#"
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。