新政権が若者の雇用対策強化を打ち出したことを受けた方針で、厚生労働省は今年度の補正予算案に関連の600億円を盛り込み、現在116箇所ある、地域若者サポートステーションを160か所に増やす方針を決めた。
「サポステ」4割増…学校と連携しニート支援:YOMIURI ONLINE(読売新聞) いろいろな人がこのニュースを受け、
「支援者の質を上げることも重要」だと言っている。
僕もそう思う。
では、今の支援者の質は本当に低いのだろうか?
実は、支援者の質は向上しているんじゃないのかと思ったりもする。
ベテランたちにこの質問をすると、
「質は向上していない」という人が残念ながら多い。
(質ってなんだという議論は大事なんだけどひとまず置いておく)
サポステ一箇所5名の支援者が配置されていたとして、
(※もっと多いところともっと少ないところがある)116箇所×5人ということは、毎日580人の支援者が、
困難を抱えた若者たちに出会っているわけだ。
これはすごいことだと思う。
さらに、厚労省発表の
地域若者サポートステーション事業の実績を見てみると、
23年度の延べ来所者数は、454,675人となっている。
単純な試算だけど、これを580人の支援者で対応すると、
支援者1名が年間平均783人と出会ってることになる。
2006年7月の事業開始後、徐々に数を増やしてきたわけだが、
これは、ものすごいOJTが行われてきたといえる。
これだけの対応実績があれば、どんなに腕の悪い支援者だって、
「4月に来たときはどうなるかと思ったけど、随分支援者らしい顔になってきたなあ」なんてことになっていると、同業者としては思うのである。
それでも支援者の質は上がらないのか?みんなが言ってるように、質が上がっていないとした場合、
どうしてサポステ支援者の質は上がらないのだろうか。
契約社員という雇用形態のせい?
給料の安さのせい?
これは2004年頃の委託事業が開始する前のNPO法人の方が、
雇用形態は曖昧だったし、給料はもっと安かったので、
良質な人材確保が難しいとしても、本質的な理由ではないのではないだろうか。
それよりも、
サポステという事業フォーマットでは支援者は育ちにくいのではないか、ということは考えられないだろうか。
サポステのフォーマットというのは、
大抵の時間は、マンツーマンのテーブル越しの対面支援、
60分ワンセッションで、次々に若者が入れ替わるような。
つまりこれは、
キャリア・カウンセラーによるキャリア・カウンセリングであり、
スタッフはキャリア・カウンセラーの資格取得者となっている。
サポステは、厚労省が認定しているキャリア・カウンセラーの、
雇用創出に大きく貢献している受け皿事業でもあるのだ。
ちょっと乱暴な言い方をすると、
彼らは
そもそもが支援者ではない人たちなのだ。
あぁ、正直、面倒くさい話しの流れになってしまったと後悔している…。
一旦、支援者とキャリア・カウンセラーを僕の中で提議してみよう。
支援者:目の前の相談者の”人生"そのものを背負い込んで支援をする人たち。ゴールはその方の自立であるものの、それは就職だけに限定されたものではない。課題介入型の支援を行い、強烈な関係性を取っ掛かりに支援を開始することが多い。共に何かをすることで関係性を深めいていくことが得意。
キャリア・カウンセラー:目の前の相談者の”仕事”にまつわる悩みを解決する手助けをする人。傾聴型の支援であり、解決するのは相談者であり、答えは相談者の心の中にあることを前提とされるため、介入はせず、依存関係に陥らないように常に注意が払われている。テーブル越しの対面支援が主である。
同業諸兄の皆さまがた、どうだろうか?
異論反論はありそうだけど、僕はそう思っている。
ちなみに僕のアイデンティティは、
キャリア・カウンセリングの勉強を熱心にした支援者である。
振り返って、みんなの言ってる
「支援者の質を上げることも重要」とは、
キャリア・カウンセラーの支援者化ということなんじゃないだろうか?
実際、僕が信頼しているキャリア・カウンセラーたちは、みな支援者然としている。
実際、傾聴して主訴を導き出し、自己理解を深める手伝いをし、
アセスメントツールにより適職診断し、エントリーシートの添削、
面接の練習をしただけで結果が出るような生易しいケースは少ない。
しかし、「支援者とは」で書いたようなことをしているような、
悠長な予算のつき方はしていないし、
そもそもが、そのようなトレーニングされた人たちではないのだ。
また、受託団体で自主事業を持っていないNPO法人の場合、
そのトレーニングの場さえ持っていないし、
必ずしも、自主事業の場で獲得したスキルがポータブルではないことも多い。
サポステ同士を競争関係に置き、
成果の求め方は、年々厳しさを増していると聞いている。
そしてこのニュースの大盤振る舞いな予算措置。
そして更に強まるであろう成果指標と評価。
どんどんハローワーク化していくのだとしたら、
支援者の質の向上はやはり望めないのではないだろうか?
結論をいうならば、
サポステに働く者と、そこに集まる若者との間に、
大きなミスマッチがあるのではないだろうか?
誤解のないように言っておくと、
キャリア・カウンセラーがダメだといっているのではない、
そういう人ばかりがいたのでは、多様なニーズを持つ若者たちに、
機能しにくいのではないかということだ。
予算が拡大するのなら、多様な人材を雇用できるような設計にも
変えるべきだと思う。